更新・退去・原状回復

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1 更新拒絶・解約申入れと正当事由

賃借人の義務違反等がない場合、賃貸人は、1.合意による解約、2.期間満了時の更新拒絶又は3.解約申入れのいずれかの方法により契約を終了させることになります。

1.合意解約については、双方の合意に基づく契約の終了ですので、特別な要件等は定められていません。
契約に合意解約に関する条項が定められている場合は、原則としてそれに従って解約手続が進められることになります。

2.更新拒絶及び3.解約申入れの場合の手続については、期間の定めのある契約であるか否かにより要件が異なります。

また、いずれの場合でも「正当事由」がなければ、賃借人から一方的に契約を終了させることはできません。

2 立退料の算定方法

裁判における立ち退き料の算定

立ち退きの裁判において、裁判所が立ち退き料を算定する場合、定型的な方法があるわけではなく、個々の事案により、諸事情を総合考慮の上、立ち退き料が算定されています。

傾向として主に、(1)借家権価格による算定、(2)移転に伴う損失補償による算定、(3)総合考慮による算定のいずれかの方法が用いられることが多いです。

また、審理の中で立ち退き料の鑑定が行われている場合や、賃貸人や賃借人から鑑定書が提出されている場合には、鑑定結果が基礎にされる傾向にあります。もっとも、事案によっては、賃貸人側の事情・賃借人側の事情を考慮して鑑定結果を修正し、増額・減額されることもあります。

交渉における立退料の算定

任意交渉の場合、当事者双方が、互いに妥当と判断する立退料の金額等を主張し、双方が譲歩することのできる金額を探ることになります。この場合も、当事者や代理人が、説得的な算定根拠を提出する必要がありますが、裁判と異なるのは、任意交渉で解決しようとする場合、賃貸人側で早期に解決する利益が生じるため、賃貸人が早期明渡しを求めるほど、金額面での譲歩の余地が生じるという点にあります。

3 退去時の賃料の日割精算に関して

退去時の賃料日割清算に関する契約書例

  • 「1ヶ月に満たない月の賃料は日割りとする」→(日割り可能)
  • 「契約終了月は、日割計算は行わず、半月単位で計算した額とする」→(半月割り)
  • 「契約者は1ヶ月分の賃料相当額を甲に支払うことにより直ちに本契約を解除することができる。尚、明渡し月の日割計算はしない。」→(退去月の日割り不可)
  • 「契約終了月は、日割計算は行わず、月単位で計算した額とする」→(退去月の日割り不可)

4 契約の解除

ビルオーナーからの解除

テナント(以下「賃借人」といいます。)に賃貸借契約の債務不履行(例えば、建物の無断転貸をしたり、賃料を支払わなかったりする場合が考えられます。)がある場合には、ビルオーナー(以下「賃貸人」といいます。)はこれを理由として、賃貸借契約を解除することができる可能性があります。

ただし、賃貸人からの債務不履行解除については、実際に建物を利用している賃借人を軽微な契約違反で追い出すことは酷であることから、判例上、違反行為が賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊する程度のものであることが必要とされています。

賃借人の債務不履行により信頼関係が破壊されるに至った場合には、賃貸人の賃借人に対する解除の意思表示により賃貸借契約は終了し、賃借人は建物から退去しなければならないことになります。さらに、賃借人の契約違反によって、賃貸人に損害が生じた場合には、これを賠償しなければならない可能性もあります。

テナントからの解除

賃貸人に賃貸借契約の債務不履行(例えば、建物の修繕義務を履行しなかったり、第三者が建物の使用を妨害しているのにこれを放置したりした場合が考えられます。)がある場合には、賃借人はこれを理由として、賃貸借契約を解除することができる可能性があります。

解除が有効になされた場合、賃借人の賃貸人に対する賃貸借契約の解除の意思表示により契約は終了します(なお、賃貸借契約書中に債務不履行解除に関して、治癒期間、催告等の一定の手続的要件が規定されている場合には、原則としては、かかる規定にも従う必要があります)。

さらに、賃貸人の債務不履行により、賃借人に損害が生じた場合には、賃貸人に対して債務不履行に基づく損害賠償請求をできる場合もありますので、このような場合には損害が生じた事情を証明する資料等を持参して、専門家に相談することが有用です。

5 建物の明渡請求

建物のオーナー様や不動産管理会社の担当者から賃貸物件に関するご相談が多いケースとして

  • 建物が古くなってきたから、そろそろ建て替えをしようか。
  • 家族が増えたので、賃貸物件を自宅として使いたい。
  • 借主が家賃を滞納するからそろそろ退去してほしい。
  • 契約書上の借主と全く違う人が住んでいるので契約を打ち切りたい。
  • 借家人が行方不明で連絡もつかない。滞納もあるし、賃貸借契約を終わらせたい。

などが挙げられます。

ただ、借主側が協力的で自発的に退去してもらえるケースも少なからずあるでしょうが,多くのケースでは退去の話を持ち掛けたとしてもなかなか退去してもらうことが出来ません。

そのような場合に、借主から賃貸物件を明け渡してもらうためには、裁判所に「建物明渡請求訴訟」を申立てて、判決等により貸主側の主張を認めてもらう必要があります。また、判決が出されても退去しようとしない借主に対しては、更に「強制執行」手続により明け渡しを求めなければなりません。 当事務所では、今まで携わってきた事件から蓄積されたノウハウに基づき,オーナー様の置かれている状況を伺った上で、解決までの見通しや最適な手段をご提案いたします。

6 賃貸人の自力救済

賃貸人側が賃貸物件の鍵を付け替え、実力で賃借人を追い出したり、法的手続によることなく賃貸物件内の動産の撤去処分等を行ったりする行為、いわゆる「追い出し」行為(これを、「自力救済」といいます。)が問題となることがあります。

7 原状回復・ルームクリーニング

原状回復費用については、最高裁判例での見解やそれを踏まえた国土交通省によるガイドラインが発表されていますが、いまだに、紛争が多く見られる状況にあります。

物件を貸す側から賃貸借契約の終了時の原状回復についてみると、貸した時の状態に戻して返却してもらうことを望んでいます。賃借人が利用して汚した部分や傷つけた部分を直すことはもちろん、次の入居者へ貸すためには綺麗な状態でなければ意味がないため、貸した時の状態に戻すことを当然のことと思っているかもしれません。

しかしながら、最高裁の判例や原状回復のガイドラインではそのような理解はされておらず、原状回復義務については、故意又は過失により傷つけたりした部分を直して、賃貸借終了時点の物件を返還することが前提となっています。ここで貸す側の思惑と大きく相違しているのが、原状回復すべき時点の捉え方であり、貸した時点の状況に戻すのではなく、借り終わった時点のものを返すことが前提にされています。

したがって、原則として、どちらの責任でもないような汚れや、通常使っていれば損耗又は消耗するような価値(「通常損耗」などと呼ばれます。)については、賃借人の負担ではなく、賃貸人が負担することになります。そのため、通常損耗に入るような内容については、賃貸人の負担であり、これを賃借人に負担させることは例外的、特殊な契約であるということになります。

原状回復の負担範囲に関して、紛争が耐えない中、最高裁の判例は、本来、賃貸人が負担すべき原状回復の範囲を賃借人へ転嫁するためには、賃借人において補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が具体的に明記されていることを求めており、それをうけて、通常損耗の範囲に該当するハウスクリーニングについて、金額を明記する契約書も増えています。

裁判例では、本来通常損耗であり賃借人へ転嫁していることを理解させた上で、金額を明記しているような事例で、かつハウスクリーニングが専門業者により実施されることも認識していた場合に、はじめて費用を負担させることを認めています。

金額を明記することも重要ですが、最高裁判例が示す明確性にとって、より重要なポイントは、「本来、賃貸人の負担である費用を、特約により賃借人へ転嫁している」といるということが、賃借人に理解されているか否かという点です。ご相談のような、金額の明記のみがなされている場合は、賃借人が本来負担しなくてもよい金額を負担しなければならない、と理解できる説明がなされていない限りは、原状回復費用を賃借人に負担させるものとしては有効にならないおそれがありますので、注意が必要です。

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